教養学部 全科類対象 全学自由研究ゼミナール「Medical Biology入門コース」

2010年度 C1-C2 Medical Biology入門講義

時間:2010年4月19日~7月12日 5時間目(予定)
場所:駒場キャンパス

生命現象から病気の治療へ―多様な医学研究

当講義は、文科系理科系を問わず全科類のみなさんに向けて、医学部で研究活動に携わる教員によって行われる講義である。本学医学部では、解明されていないこと、解決法が求められていることに対して、新しい医学を発信する、すなわち広い意味で医学研究を推進する人材の育成を目指している。本講義はその一環として行われる。
近年、医学研究の発展と、それに向けられた興味は著しい。巷にも健康や治療法の最新の研究結果に関連した情報があふれている。実はそれらの情報の背後には長年に亘る地道な基礎研究の積み重ねがあるが、しかし、そこに携わる研究者から直接に研究についての考え方やより深い背景の情報を学ぶ機会は、驚くほど限られている。高校までにはこうした最先端の医学研究を深く紹介するカリキュラムはほとんどなかったのではないか。そこで将来多方面で活躍するだろう本学のみなさんに、この大学の医学系研究科で行われているこれらの研究活動についてなじみを持ってもらいたいと考え、本講義を企画した。
本講義では背景知識は必要としない前提で準備をする。しかしいくら平易に準備しようとしても、医学には、理論化されてない事実が多く存在し、それらを命名する必要があるため専門用語が多くなるのは宿命である。したがって、より簡潔を目指して理論を積み上げていくタイプの他の理系の講義と異なり、講義で一度聞いただけでは理解が難しいと感じることが多いかもしれない。しかしそれが医学の一面である。本講義に対して学生諸君は、単語や内容をすべて丹念に追って理解しようという気持ちではなく、最先端の熱気にふれ、各講義から何かひとつでも自分の将来の考え方の道しるべや、ロールモデル、師となる人を探そうという気持ちで受講して欲しい。そのため、試験は行わない全学自由ゼミナールの形式でこの講義を開講している。
2010年度夏学期の講師陣とその内容の予定は以下の通りである。

1 4/19 講義ガイダンス
岡部 繁男(神経細胞生物学)
「シナプスを介した脳内情報伝達の可視化」
2 4/26 笠井 清登(精神医学)
「精神疾患の脳病態を神経生理・神経画像を用いて解明する」
3 5/10 廣瀬 謙造(神経生物学)
「ダイナミックに展開する生体内可視化プローブ」
4 5/17 飯野 正光(細胞分子薬理学)
「カルシウムをはじめとした細胞内シグナル伝達の解明」
5 5/24 小野 稔(心臓外科学)
「補助人工心臓の臨床と基礎」
6 5/31 清水 孝雄(細胞情報学)
「炎症に必須の脂質メディエーターと細胞膜を構成するリン脂質の代謝」
7 6/7 栗原 裕基(代謝生理化学)
「生命の「かたちづくり」を制御する分子メカニズム」
8 6/14 鄭 雄一(ティッシュ・エンジニアリング部)
「バイオマテリアル開発による再生誘導能を有した高機能人工骨・人工軟骨の創製」
9 6/21 畠山 昌則(微生物学)
「ピロリ菌感染と胃がん」
10 6/28 吉川 雅英(生体構造学)
「重要な細胞内小器官 鞭毛・繊毛のメカニズムを視覚的に解明する」
11 7/5 狩野 光伸・倉知 慎(MD研究者育成プログラム室)
「ナノテクノロジーによる難治がん治療」
「有効なワクチンの開発を目指したT細胞機能の解析」
12 7/12 まとめ 清水 孝雄 学部長
「新しい医学を発信できる人材を育成する東京大学医学部」

上記のように、本講義の講師は、本学大学院医学系研究科において、基礎臨床を問わず最先端の研究に携わる研究者たちである。様々な医学領域の多様な研究者が週ごとに分担して、医学におけるどんな問題に立ち向かっているのか、何に魅力を感じて研究世界に入り、活動を続けているか、何が明らかにされつつあるのか、を語る予定である。
授業の形式としては、90分を前半後半にわけて二部構成で行い、間に質疑応答をはさむスタイルで行う。各回授業には、教授クラスの教員による授業(その研究領域のサマリーと各研究室の活動内容)、若手によるプレゼンテーション(実際に手を動かして筆頭著者として論文を書いている人や研究を始めた人の生の声の紹介)を混ぜ、その領域の権威から、みなさんに年齢も近く実際の活動を担っている人たちの経験までを共有していただこうと思う。

内容の理解は、受動的に聴講するだけでなく、自ら行動を起こすことによってより深まって行く。諸君が、講義内容の理解が十分でない初歩的な質問をするのは当然のことで、なんら失礼はない。自分の質問しようとする内容を心配することなく、活発に質問を出して交流してほしい。講義後は、演者に少し時間をとって残ってもらうようにするので、興味があった講義の後は、演者と語ってほしい。

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