プログラムについて

MD研究者育成プログラムとは


医学部長
齊藤 延人

MD研究者とは、医師(MD)の資格を持った研究者のことを指します。基礎系の研究者も臨床系の研究者もいます。東大医学部の卒業生は、どの分野に進むにしろ多くの方が研究に携わっていくことになります。最近、全国の多くの基礎系講座においてMD研究者が不足していることが大きな課題となっています。特に若手研究医の数が減少しているのです。医学部の基礎系科目は、解剖学、生理学、生化学、薬理学、病理学、法医学などですが、それぞれの切り口からこころとからだの仕組みを知り、病気のメカニズムを解明しそれを克服することが目的となっています。そのような学問を発展させるために、医学を学んだ者、臨床の現場でリサーチクエスチョンを得た者が研究者になることには、大きな意味があるのです。実際、基礎系の教授の多くは、かつて臨床教室に所属した方も多くいます。

医学教育の改革により参加型の実習が重視されるようになりました。また医師免許取得後も2年間の初期臨床研修が必要です。そのため、医師になるのに時間がかかるようになりました。現役入学生の年齢で考えると、医学部の場合は大学を卒業して初期研修を開始するのが25歳、初期研修を終了してそこからから研究を始めようとすると27歳くらいになっています。他学部の学生さんを考えると、大学3年生(20歳頃)で研究を始め、修士2年、博士3年と研究を続け若いうちに研究力をつけています。特に東大医学部の場合には、基礎研究者になりたいという初心を持つ学生さん達も多くいますので、そのような方々のモチベーションを育み、医学部の学生のうちから基礎研究に触れる機会を提供することが重要視されようになりました。私自身は臨床の研究者ですが、かつて基礎の研究室でもお世話になりました。当時はおおらかな時代でしたので、医学部に進学したばかりの猛者達が自主的に研究室に出入りして研究をしていました。今では多くの方々が第一線の研究者として活躍されています。そのような活動を公的にしたものが、MD研究者育成プログラムなのです。

このMD研究者育成プログラムは平成20年に設置されました。学部課程の途中で大学院コースを開始するPhD-MDコースとも連携しています。MD研究者育成プログラムでは、医学部生が早いうちから最先端の基礎研究に触れて研究者としての姿勢を体得することを目標としてカリキュラムを作っています。教養学部からの医学部進学希望者を対象に自由参加の基礎医学入門ゼミを開講しています。医学部進学後はプログラム履修希望者に登録申請してもらい、基礎医学ゼミ、英語ゼミ、各種セミナーを受講します。研究室配属で実際の研究にも触れ、卒前研究を行い、終了後英文修了論文として提出することを目指します。論文は修了論文審査会で評価され、優秀者には医学部長賞が授与されます。また、短期海外留学支援や学会発表支援も行っています。さらに、複数大学の連携によるコンソーシアム形成しており、東京大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学4大学の連携と、東日本コンソーシアムがあります。東日本コンソーシアムでは医学部生の合同リトリートを毎年実施しています。

このプログラムを遂行するためにMD研究者育成プログラム室が設置されており、教職員が皆さんの活動をきめ細かくサポートします。皆さんの学生生活が充実したものになるように、また輝かしい将来のために、多くの学生さんたちの参加を期待しています。

2019年10月

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