プログラムについて

医学部長からのメッセージ


医学部長
南学 正臣

東京大学医学部の目標は、生命科学・医学・医療の発展に寄与する人材を育成することです。特に、生命科学研究において世界をリードする研究者を輩出することは、東京大学医学部の重要なミッションです。しかしながら、日本全体で臨床系若手研究者の減少と基礎医学系講座における医学部出身研究者の減少は喫緊の課題となっています。

MD研究者とは、医師(MD)の資格を持った研究者のことです。東京大学には、基礎研究者になりたいという初心を持つ学生さんたちも多くおられます。我々は、そのような方々のモチベーションを育み、医学部の学生のうちから基礎研究に触れる機会を提供することを重要視しています。国際的指導者になる人材を育成する役割をもった東京大学にとって、研究者の育成はその重要な責務です。本プログラムは特に基礎研究を目指す医学研究者を育成することを主な目的としており、通常の医学科カリキュラムと並行して、放課後や長期休みを利用して研究室で実験を行い、早期から基礎研究の面白さを体感しながら、世界で活躍する基礎研究者に必要な経験を積むことができるようになっています。

基礎研究を行う医学研究者は臨床医学に革新をもたらす基礎的発見をするとともに、基礎医学と臨床医学の橋渡しをする役割も担い、最先端医療の開発の中心的な役割を果たします。

臨床の場においては、医療の発展・専門化に伴い臨床の習得に要する期間が延び、専門医取得までの年数も増加し、残念ながら若手研究者の減少が起きています。しかしながら、臨床医学の現場においても実臨床を知り医学研究を牽引できるMD研究者の役割は重要であり、そのニーズは更に高まっています。

MD研究者育成プログラムは2007年に立ち上がり、その後プログラムが発展し、多くの医学部生がこの活動に参加し、卒業後に様々な分野で活躍しています。研究者の中には、基礎系の方も臨床系の方もおられます。臨床に携わる上でも、きちんと病態生理を理解した上で診療を行うのと、単に目の前の症状に対応するのでは、結果が全く違います。東京大学医学部の卒業生は、どの分野に進むにしろ、多くの方が研究に携わっていくことになります。私自身は留学中に指導教員であった Willam Couser 教授から

"Academic medicine and research is a life that has constant new paths to pursue, constant intellectual stimulation from both the science and the colleagues, many opportunities to see the world, and the high rewards of asking important questions and finding answers to them."

と言われました。是非、若い方々には探索的な研究を行い、疾患の病態生理を解明し、最終的に疾患の克服に役立つ可能性のある大きな発見をして頂きたいと思います。MD研究者育成プログラムは、その出発点になるプログラムです。

2023年8月

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