プログラムについて

室長からのメッセージ

MD研究者育成プログラムの行くところ

廣瀬 謙造
MD研究者育成プログラム室長
令和3年4月〜

MD研究者育成プログラムは基礎系医学研究者の育成を目的としています。2007年、基礎医学研究へ進む医学部医学科卒業生が減少してきた状況を何とか打開しなければならないという思いで、当時の医学部長であった清水孝雄先生によって創設され、現医学部長の岡部繁男先生が初代プログラム室室長に就任されて始まりました。以降、吉川雅英先生、尾藤晴彦先生と室長が引き継がれ、歴代室長と室員の熱い思いと戦略、プログラム参加学生の斬新なアイデアによってMD研究者育成プログラムはどんどん充実したものになってきました。近年では履修生数も多く、基礎研究をキャリアパスとする卒業生が増えてきました。私が学生のころに本プログラムがあったらよかったなあと思うとともに、今プログラムに参加している学生さんが羨ましく感じています。

MD研究者育成プログラムで得られること

本プログラムでは基礎系医学研究者が育つことを目的としていますが、特殊訓練プログラム(=虎の穴)の類ではありません。例えば実験研究の訓練には、ピペットマンでの正確無比な溶液の分注であるとか、顕微鏡の華麗な操作であるとか、解析用コンピュータを完璧に使いこなすなどとか、色々ありますが、これらをMD研究者育成プログラム室で訓練する事はほぼありません。みなさんは配属されているそれぞれの研究室で習うことでしょう。むしろ、研究者の卵に栄養を供給すること、包む温度や空気をつくること、同好の士が集える場や飛び立つためのジャンプ台を提供することが私たちの役割だと考えています。例えば、学会に参加して研究発表を行う際、仮に研究室にサポートを言い出しづらいと思っても、当室が旅費などの費用についてサポートを行うことができます。海外留学などのもっと大きな金銭的コストがかかるイベントについても支援しています。所属研究室でみなさんが行う実験材料の一部の費用についても支援を行っています。また、主として低学年向けにMolecular biology of the cellの輪読会や英語ゼミなどで基礎的な内容を会得する機会を提供していますが、この機会では学年を超えたプログラム生の交流が可能になるでしょう。東大リトリートにおいては、より学年を超えた交流もできます。同級生が他の研究室で何をしているのかを知るだけでなく、先輩や後輩は何をしているのか?どんな考えをもってやっているのか?知ることができる絶好の機会です。プログラムを履修した駆け出しの研究者の生き方についても知る機会でもあります。部活以外で上下の学年を超えて活動することはめったにないでしょう?さらに、東日本リトリートや全国リトリートなど、他大学学生との交流の場もあります。本年度から京都大学、大阪大学、名古屋大学と連携してラボとの相互訪問をできる仕組みを整備しています。これで東大の外での研究を体験することが可能になります。これらMD研究者育成プログラムのいろいろな活動や運営に参加学生自体が貢献する仕組みもあります。(JTA(Junior Teaching Assistant)として働くことで、何某かの経済的余力も生まれるでしょう。余分なバイト時間が減らせて研究時間が増えるかもしれません。)

折角だから研究をしよう

大学は学問を学ぶ場であるとともに学問を創る場です。しかし、他学部学生と比べて、医学生は医師になるために膨大な基礎知識を得ることが必要とされているところが特徴的で、学問を学んではいるが創る機会が少ないことが残念です。例えば、理系の学部では大抵4年生で卒業研究などの履修において研究室で長い期間研究する機会がありますが、これらは医学生が受けるいわゆる実習でなく、研究の一部を担当するのが通例です。M3,M4に当たる学年は修士課程の学年に相当し、100%近く研究という場合が多いです。正規カリキュラムにおいて、学問を習うだけでなく、学問を創る側を経験できるのです。医学科カリキュラムのデフォルトではフリークオーターが研究する機会ですが比較的期間が短く、研究の一部を担当している感覚を味わうには十分でないかもしれません。カリキュラムをこなすだけでも大変なのは十分わかりますが、もうひと踏ん張りして、研究してみませんか?折角大学に入ったのだから学問を創る感覚を味わってみませんか?基礎研究よりは臨床を主軸に考えている学生さんもいるかと思いますが、基礎研究の成果は、いずれ意識するしないに関わらず、未来の臨床現場に重大な影響やブレークスルーをもたらすものです。それはそれで素敵だと思うのではないでしょうか。基礎研究に興味があるすべての学生さんを我々は応援します。

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