プログラムの目的

 現在、医学研究の各分野における研究は著しいスピードで進展しています。世界の研究最前線では、多くの日本人研究者が各々の分野で輝かしい研究成果を挙げ、主導的な役割を果たしています。しかしその優位がいつまでも保証されているわけではありません。最先端の研究成果を追い越し、新たな地平を拓く、優秀な若い研究者の輩出が切望されています。

 東京大学は我が国を代表する基幹大学であり、世界レベルで指導的な役割を果たす人材の養成が求められています。この社会的要請は医学部においても全く変わることはなく、「優秀な医師を養成して社会に送り出す」ことはもちろんのこと、「生命原理の解明」、「難治疾患の病因解明」、「先端医療の開発」などを通じて、明日の医学・医療を創出することが求められています。しかし後者を担う医学研究者を志す人材は減少傾向にあり、次代の基礎医学研究者を発掘し積極的に育成する公的なカリキュラムの必要性が認識されるようになってきました。

 従来のカリキュラムでは6年間の学部教育を修了してから研究生活(大学院)に入るのが通常のコースでしたが、今日では、それがスタートの遅れとなり、その後の研究の進展に影響を及ぼしていると懸念されています。

基礎医学研究者としてのキャリアを視野に入れている学生には、当プログラムなどを通じて、いち早く学部生の時から最先端の研究現場に身を置き、テーマの設定方法、学術情報収集・文献検索の方法、実験の組み立て方や実際の手技、データの解釈やまとめ方、発表方法などに触れて、研究者の考え方を身につけることで、自分自身の可能性を大きく伸ばすことができます。このような研究者として必要な「作法」を学部生の時期から積極的に習得する機会を設けることを目的として、平成20年度から「MD研究者育成プログラム」が運営されています。

 具体的には、M1の時期から基礎研究室の一員として研究に参加し、実験方法や研究姿勢を習得すると同時に英語での論文作成やディスカッション・スキルの訓練などを通して、基礎医学研究者としての姿勢を体得することを目標とします。

 このプログラムは通常の医学教育カリキュラムに代わるものではなく、通常の6年間の医学教育と並行して進められます。従ってこのプログラムを履修する学生にとっては負担が増えることになります。しかし、否、だからこそ、基礎研究に情熱を傾けたいと考えている学生の参加を求めています。教授・先輩研究者たちもその期待に応えるべく親身になって指導を行う決意を固めています。双方の協力によって若い才能が開花することを願っています。

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