カリキュラム

本プログラムの特別カリキュラム

 MD研究者育成プログラムの履修を希望する方は、M0やM1のフリークオーターの期間などを通じて、今後自分が長期に所属を希望する研究室をいくつか実地で回り、所属希望研究室(前頁のリストにある講座より選択)を決定してください。
 MD研究者育成プログラムの履修者には、通常の医学部カリキュラムに加えて、M1からM4の期間に、以下に説明する履修生向けカリキュラムが用意されています。

A 所属する研究室での研究活動

プログラム履修届けおよび研究室配属

 M1の4月下旬に本プログラムの説明会を実施し、履修希望者は履修届けを提出して頂きます。そして、遅くともM1後期修了時までに、本郷地区の基礎医学講座を配属研究室として決定し、その後研究に取り組む体制を各自で確立します。現時点では履修者の選抜は実施しておりません。
 M2以上で履修を希望する場合は、スタッフまでご連絡ください。

研究室での研究実践

 フリークオーター期間、夏の長期休暇、正課時間外(平日の早朝や夕方、土日)等を利用し、配属研究室にて指導教員のアドバイスを受けながら実際の研究を進めます。あくまで講義・実習と並行して行うものであり、研究の手法や論理的思考能力を身に着けることを主眼とします。

論文作成

 論文の構成、表現方法など基礎的な訓練から指導を受けることによって論文作成能力が向上します。卒業時に修了論文を提出しますが、大きな結果が出ることよりも、研究の思考法が身についたかどうかを重点的な評価項目とします。

B. MD研究者育成プログラム室が主催する少人数ゼミや研究報告会

基礎医学ゼミ

参加者:プログラム履修学生および担当教員
ポイント:色々な分野について自ら論文を調査し発表、議論することで、講義で聞くだけよりも詳しくなれる、しかもディスカッション能力も付く、というのがこのゼミの特色です。そのためには、ほかの人の発表の時は、議論に積極的に参加するのがお勧めです。少人数によるゼミですので、講義や教科書や関連の文献を読んで、なんとなくわかったつもりになっていた事柄が、その分野の専門家を含めたディスカッションを生で聞き、インタラクティブな討論を通して、格段に理解が深まるという経験が得られると思います。憶せず質問をすることが、理解への最善の方法といえます。

ゼミの実施要領

Medical Research Communications

 外国人講師を招いて、英語で発表や質疑応答を行う練習をします。一班4-6名程度の少人数グループで積極的に発言することで、英語による科学コミュニケーションに習熟します。

■6 卒業生との交流会

 毎年夏に本プログラム卒業生による卒後の研究や研修の報告会と交流会が開かれ、多くの現役履修生が参加します。

■7 研究報告会

 年に1回、履修生による研究活動を発表する場を設けています。ここ数年は合宿形式のリトリートとして開催しています。本リトリートでは履修生それぞれの研究進捗報告に加え、最先端で活躍されている研究者の先生をお招きしたご講演、学会発表や短期留学の報告、卒業生の研究発表などを行っています。

2022年度東大リトリート

2023年2月11日(土)-12日(日)に山中寮内藤セミナーハウスにて、2022年度MD研究者育成プログラム東大リトリートが開催されました。最終的には43名
(内訳: C1: 2名、M0: 8名、M1:8名、M2:7名、M3: 6名、M4: 4名、OB: 4名、教員 4名)が参加し、大変活発な議論が行われました。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年度はzoomでの開催、2021年度は鉄門記念講堂とzoomでのハイブリッド開催でしたが、今年度は3年ぶりの宿泊を伴う完全対面形式での開催となりました。各日には以下のような企画が行われました。

1日目 招待講演、M1-M3プログレスレポート、卒業生講演、留学報告会、懇親会
2日目 M4修了論文発表会、パネルディスカッション、自由歓談・散策

本リトリートの目的としては、履修生が各自の研究について発表することはもちろんですが、研究内容のみならず、研究に対する比重の置き方や将来のこと、はたまた趣味の話に至るまで、多岐に渡って履修生・OBの皆様・先生方と議論できることにあると思います。次回以降から初めてリトリートに参加される学生の皆様も、ぜひ臆せずに色々な人に話しかけに行ってみて下さい。他分野の研究発表では分からないことも多いですが、質問すれば皆さん丁寧に教えて下さいますし、研究以外の話・相談も大歓迎されることと思います。
M1-M3のプログレスレポートは英語にてポスターを作成し、日本語で発表を行う形式でした。質疑応答の時間を過ぎても質問が終わらないという活発な議論が行われているポスターが多数見受けられました。プログレスレポートの時間以外でも、休み時間や懇親会中など、自分が聞くことのできなかったポスターについて聞きに行ったり、捌ききれなかった質疑応答の続きをしたりと、対面形式ならではのインタラクションが見受けられました。
1日目夜の懇親会では、アイスブレイクで盛り上がった後、学年や所属を問わず、各々の研究の話や進路の話に花を咲かせ、多くの人が深夜まで語り合いました。2019年度までの対面形式でのリトリートを彷彿とさせる光景だったと思います。私自身も招待講演でお招きした先生から研究や将来に関する悩みをご助言いただいたり、逆に後輩達に私自身の勉強と研究の両立について話したりと大変充実した時間を過ごすことができました。
2日目のパネルディスカッションでは現役学生(M2-M4)、PhD-MDコース履修生、OBにパネリストとしてご登壇いただきました。テーマとしては、研究室・研究テーマの選び方やキャリア、留学といったMD研究者育成プログラム履修生にとっては気になる話題が取り上げられました。様々な意見が挙げられ、良い刺激となる企画だったと思います。
3年ぶりの宿泊を伴う中での開催、そしてコロナ禍とのことで手探りではありましたが、MDプログラム室の先生方・スタッフの皆様・そして学生委員の皆さんのご協力により無事開催できました。降雪による遅延など予期せぬトラブルにも見舞われましたが、学生代表として皆さんに楽しく充実した時間を過ごしていただくためには何が必要か考え、臨機応変に対応したり指示を出したりすることは、とても貴重な経験となり同時に良い思い出となりました。計画関係者の皆様にこの場を借りて篤く御礼申し上げると共に、来年度以降も対面での開催を継続できることを切に願っております。
(2022年度 東大リトリート学生代表 A.O.)

その他、履修生や卒業生による自主ゼミや交流会等

本プログラムは学生の自主的な企画を支援します。これまで、履修生あるいは卒業生が主体となり、様々なゼミや交流会が開催されました。

C. 研究活動支援

■8 上級学年履修生による下級生のリード

 下級学年の基礎医学ゼミ、研究発表会では、チューターやマネージャーを務めてもらうことで、自分の知識の確認はもちろん、コーディネート能力も養ってください。今後の医学研究で必要性が増えていくと思われる、多分野連携をリードしていくには、コーディネート能力が欠かせませんが、医学部の通常カリキュラムでは、その能力を磨く機会がほとんどありません。
 この活動に対してはジュニアTA(Teaching Assistant)として公的な支援を受けられます。

■8 学会発表、研究留学の経済的支援

 研究成果の学会発表(国内外)を積極的に推進、援助します。また海外を含む短期研究留学も推進します。これらにかかる費用に関しては、学生に余分な金銭的な負担がかからないように、医学部の予算を活用して支援を行っています。学会や短期留学を経験した学生には、東大リトリートで発表をお願いし、履修生間で体験を共有する事を目指します。

海外短期留学体験記

M4時のエレクティブ・クラークシップの1か月間、MD研究者育成プログラムのご支援のもと、ハーバード大学のMolecular & Cellular Biologyの研究室に留学させていただいた。短期間であったため、ちょうどポスドクの方が立ち上げようとしていたマウスの行動実験タスクのPreliminaryなデータ収集を行った。行動実験系としては日本で大変苦労しながら試したことのある系だったのだが、留学先ではマウスがすぐに学習できて驚いた。マウスの遺伝的系統は同じはずだが、留学先の方が日本よりもfriendlyであり、動物にとって居心地の良いように工夫された飼育環境によるものなのか、breederによる違いなのかは分からないが、ストレスの少なさも学習の早さに効いているのかもしれないと思った。実験結果は当初の想定とは異なったが(ターゲット脳領域の破壊実験がうまくいっていなかった)、その時に先生が"That's the biology."とおっしゃったのが印象に残っている。また、他の留学生の面倒を見る機会があり、英語で人に教えるという経験もできた。その学生はタスクに関して私の帰国後も一緒に議論し、条件を整えた新しい実験を行ってくれただけでなく、よく考え、積極的に物事に関わる姿勢も学ばせてくれた。
留学中にはセミナーも多く開催され、ラボ同士の距離が非常に近いことも印象的だった。ハーバードでは研究員が互いに顔見知りであり、他の研究室のPIとも気さくに話していた。また、休みの日にラボメンバーやその家族でBBQをしたり展覧会を見に行ったりと交流を深める機会も多かった。
世界の最先端の研究が生み出される背景には、手厚い教育体制だけでなく、様々な人との関わり方というものもあるのだろうと思った。外に出てみなければ想像することもできなかった新しい世界を垣間見ることができ、このような貴重な経験をさせていただけたことに心から感謝している。
(2019年卒 S.T.)

■7 他大学との交流

 我が国の医学研究及び医学教育の牽引車となる人材を育成するため、基礎医学研究者育成プロジェクトが、東京大学、大阪大学、京都大学、名古屋大学で運営されています。また、東京大学、群馬大学、千葉大学、山梨大学、金沢大学、横浜市立大学、東北大学、順天堂大学、北海道大学、新潟大学、慶應大学などなど多くの東日本の大学が集まって、研究医養成コンソーシアムが運営されています。毎年これらの大学間で学生同士の研究交流会が行われており、基礎研究医を志す医学生のネットワークが形成されています。ここで培われる人脈は、研究分野を超えて将来きっと役立つことでしょう。

第10回東日本リトリート

2019年8月17日と18日の2日間、主幹である東京大学の鉄門記念講堂をメイン会場に第10回東日本研究医養成コンソーシアム・夏のリトリート(通称「東日本リトリート」)が開かれました。本学からは主幹大学であったこともあり、私を含めて約20名の学生が参加しました。本年は東京大学の他、新潟大学、群馬大学、金沢大学、順天堂大学、東北大学、山梨大学、千葉大学、横浜市立大学から総数約80名の参加者が集まり、大変盛況な会となりました。
東日本リトリートは基礎研究に携わる学生が大学の枠を超えて集まり、お互いに良い刺激を与え合うことで研究の活性化を促すことを目的としています。会期中は日頃の研究成果の発表が行われた他、本学にてMDではない研究者として医学系の研究に従事する先生方に講演いただいたり、各大学の先生方も交えての懇談会を開くなどしました。学生同士でお互いの研究についてのディスカッションを交わすことができただけでなく、研究者を目指すにあたっての心構えについて先生方に伺ったり、将来の目標や道についてお酒も交えながら夜遅くまで語らったり、互いに刺激を与えあっていました。
私は一昨年から続けて3回目の参加だったのですが、参加するたびに全国の学生の志の高さに驚かされるばかりです。どの学生も、話を聞いてみると忙しい正課カリキュラムや部活動の合間を縫って実験・研究に励んでおり、とても自分だけ忙しさを言い訳にはしていられないと感じました。未だにいずれの大学においても、研究に打ち込む学部生の数が少ないことが実情のようですが、少しずつでもこのような会に参加する学生は増加しているように感じています。年に1回、志を同じくする仲間が大学という枠を超えて集まる東日本リトリートは、研究のモチベーションを維持するにあたって大変重要な役割を果たしていると感じております。学生代表として至らぬ点も多かったかとは思いますが、このような機会を設けてくださった研究医養成コンソーシアム及びMD研究者育成プログラムの教職員の方々、そして東大まで足を運んでくださった各大学の参加者の皆様には心より感謝申し上げます。
今後も研究医を志す学生が集い、お互いに高め合うこのような貴重な機会が益々増えて行くことを願っております。
(第10回東日本リトリート 学生代表 K.O.)

2023年度 全国リトリート

2023年4月22-23日にかけて、日本医学会総会と並行して東京国際フォーラム・アキバプラザ・東京大学伊藤国際学術研究センターにて全国リトリートが開催されました。北は金沢から南は神戸まで14大学から学生・教員合わせて100名近くが参加しました。東京での開催ということで、本学からも20名以上の学生が参加しました。
ポスター発表では2グループに分かれて発表を行うと共に、立食パーティーの会場にもポスターを設置しました。ポスター発表の時間内にはどのポスターの前にも常に人が途切れることなく来ていたように見受けられました。立食パーティーの際も、自分が興味のあるポスターを眺めたり、作成者と活発に議論したりしている学生が多かったようです。私自身も発表時には、他大学の学生さんや先生方にお越しいただきました。特に他大学の先生の中には、私の研究分野に近いことを扱っていらっしゃる方もおり、今後の研究方針についてのご助言や参考になるかもしれないポスターについて教えていただきました。学内だと近しい研究をされている先生がいらっしゃらないので、このような機会は大変貴重でした。口頭発表では、各大学1-3名の代表者に発表していただきました。どの発表もレベルが高く、さらに質問が活発になされていました。質問の内容もレベルが高く、質疑応答を聞くことによってさらに理解が深まりました。
全国リトリートでは東大内では得られないような刺激が多いのが、大きな魅力の一つであると思います。私自身も色々な方とお話しして、多くの刺激をいただきました。それは研究分野(例えば公衆衛生やより臨床に近い研究など)、研究成果(学部生にして筆頭著者で論文を出された方がいたり3年生にして既に学会発表で賞をいただいていたり)、経歴(他学部や社会人を経て医学部編入など)、研究に対する考え方(医学ならではの視点・動機を大切にしている、勉強・部活・研究へのエフォートの割き方など)などです。そうした刺激を受けて、東大医学部生の考え方や興味の方向性は類似していることに気付かされました。今後もこのように様々な考え方を仕入れる機会を大切にしたいです。
基礎医学研究をしている医学部生はそれぞれの大学で見るとごく少数だと思いますが、今回のリトリートを通じて、大学や学年という枠を取り去ると意外にも多くの仲間がいることが分かりました。別れ際には連絡先を交換している学生さんも数多くいらっしゃいました。比較的狭い世界ですので、今回のご縁が今後生きてくることもあるかもしれません。今後も全国リトリートの開催によって、基礎医学研究に興味を持つ医学部生を全国規模で繋げていくことが必要だと思います。
最後になりましたが、学生代表になったものの右も左も分からない中、多くの手助けをして下さったMDプログラム室の先生方・スタッフの皆様・そして学生委員の皆さんに、この場を借りて篤く御礼申し上げます。
(2023年度 全国リトリート 学生代表 A.O.)

Page Top